オーヴェルニュの楽屋通信

日仏で活動するヴァイオリニスト小島燎のブログ。広島、京都、パリを経て、現在オーヴェルニュ地方クレルモン=フェラン在住。

パスポート・タラン(才能パスポート、Passeport talent)審査通過!③

※こちらの記事は2021年にオフィシャルサイトに投稿したものです。閲覧数が多いので、こちらに転載します!

 

さて、passeport talent申請にあたり、前の記事で紹介した、大変曖昧な必要書類リストから想像して、また経験者のアドバイスや他のブログの記事を参考に(この場を借りてお礼申し上げます)、用意した書類は、推計150ページ超え!!

 

①カバーレター(モチベーションレター)

②これまでにフランスで取得した全てのディプロマ

③推薦書10通

④2018年〜2020年にフランスで行った全てのコンサートの契約書、給与明細、もしくはオファーのEメール。また、それを一覧にしたリスト。

⑤2021年以降で既にオファーを得ているコンサートの契約書もしくはEメール。また、それを含め、2024年までに参加するであろうコンサートや音楽祭を、報酬額(推定)とそれを月平均に換算した数値とともに一覧にしたリスト。

⑥今までにフランスで出演したラジオやテレビの記録(スクリーンショットなど)

⑦新聞批評

⑧著名な演奏家と共演したコンサートの写真

⑨経済証明

 

簡単に説明すると、

①自分が、フランスで留学生として学んだ結果として、これまでいかにフランスの音楽界において必要とされ、アクティブに活動してきて、それは今後も保証されており、いかにこの国の文化活動に資する存在であり、この滞在許可証を申請するに値する人間であるかを綴りました。笑

②エコールノルマル音楽院に、修了した課程全てとその成績を記した書類を発行してもらい、パリ国立高等音楽院には、念には念を入れ「修士課程修了」と明記した証明書を依頼しました。

③普段お世話になっている音楽祭のオーガナイザーやオーケストラ、また著名な演奏家に片っ端からお願いしました。年間どれくらいの契約を僕と交わしているか、そのオーケストラやフェスティバルにとって私がどれほど不可欠な存在であるか、・・・みんな二つ返事で温かい気持ちのこもったレターを書いてくれました。本当に感謝しています。しまいには自分が所属するトリオ・コンソナンスでも1通書き、「僕がフランスにいなければ、この将来有望なトリオが潰れてしまいます!」と書いて3人でサインしました(役に立つとは思えませんでしたが)。

④今までの契約書や明細の類は全て取ってあったので、それをひたすらコピー。とはいえ、1つずつ目を通してもらえるわけがありませんので、それはあくまで量を示すため。それとは別に、各公演の日付と場所、共演者や主催者を一覧にしたリストを作成しました。

⑤こちらも同様。「滞在期間中の計画」ということで、この滞在許可証は有効期間が最大4年ですから、向こう4年の計画を提出しました。が、もちろん4年後のコンサートのオファーなんて今現在あるわけがありません。当然、想像と希望的観測で埋めるしかありません。少しでも信頼できる証拠を増やすため、口約束の状態だったコンサートの主催者にお願いして、先んじて契約書を発行してもらったりもしました。

⑥France Musiqueなど大手のラジオ出演の様子、YouTubeにアップされているテレビ局の動画のスクリーンショット(著名な演奏家と一緒に映っている瞬間)など。

⑦インターネットで探し回って全てプリントアウト。自分の名前が出ているところに蛍光ペンでアンダーライン。

⑧活躍していると信じてもらうため、3ページくらいのフォトギャラリーを作りました。もちろん、どこのホールで誰と弾いているのか説明もつけて。

⑨銀行口座明細。これが滞在許可証の有効期間にも影響してくるかと思われます。

 

提出日の1週間前からはこの書類作成にかかりっきりでした。家中ひっくり返して過去の書類を集めたりコピー取ったり、メールボックスを遡ってEmailやPDFの契約書をプリントアウトしたり。このためにプリンター購入しました。

これをホッチキスで整理し、いざ、役所に行ってドサッと提出しました。

さすがにこんな量を提出する人は多くはないでしょうから、驚いたでしょうね笑

 

正直なところ、上の9項目のどの部分が有利に働いたのかは、わかりません。

とにかく心がけたのは熱意を示すこと。読む気の起きない書類の山だけでなく、パラパラめくった時にビジュアル的・直感的にわかりやすい写真やスクリーンショットも添えたこと。各項目に大きな見出しの表紙をつけ、そこを読んだだけで内容がわかるようにしたこと(あとの何十ページは前述のとおり、量を示すため。読んでもらえるとは最初から思っていません)。

そして、「フランスで学生として学んだ結果」が、これらの仕事に結びついているという点を随所で強調したこと。学生身分からの身分変更ということで、そのロジックを伝えることが必要ではないかと思いました。

もちろん、フランス人と遜色ない語学力があると思われるように、自分で書いたモチベーションレターはちゃんと友人に修正してもらいました(私はメールなどのライティングは得意な方ですが、フランス人が公式な書類で用いる改まった表現というのはまた別にありますので)。

 

そんなこんなで、6ヶ月は待つと思われた申請結果が3ヶ月で届きました。

(ちなみに、管轄はパリではなくBobignyの県庁です)

むろん、これにも有効期限と更新というものはありますから、今の活動を継続・発展させることが不可欠になります。

それでも、学生としてではなくプロフェッショナルとして、フランスに正式に認められたということは、一つ心の余裕になります。

留学で来た当時は、学生として学校に在籍し続けるか、もしくはどこかのオーケストラと長期契約を交わす以外、フランスに滞在する方法はないと思っていましたから、フランス人と同じように自由に仕事ができるという、こんな展開は想像していませんでした。

 

少しでも今後来られる方の参考になれば幸いです!

 

追記:カードを引き取りに行ったところ、有効期間は上限いっぱいの4年でした。最初の申請ではせいぜい2年と聞いていたので嬉しい驚きです。やはり、活動計画を4年分しっかり書くことと、推薦書でもそう言及してもらうこと、フランスに迷惑をかけないという意味で銀行残高も多いに越したことはないかと思われます。