オーヴェルニュの楽屋通信

日仏で活動するヴァイオリニスト小島燎のブログ。広島、京都、パリを経て、現在オーヴェルニュ地方クレルモン=フェラン在住。

パスポート・タラン(才能パスポート、Passeport talent)審査通過!①

※こちらの記事は2021年にオフィシャルサイトに投稿したものです。閲覧数が多いので、こちらに転載します!

 

ブログページ開設に踏み切った大きなきっかけの一つが、タイトルの通り、新たな身分でのフランスの滞在許可証が取得できることが決まったこと。

2015年9月に留学でフランスに移住してから今まで5年半、私は「学生(étudiant))」身分の滞在許可証でこの国に住む権利を得てきました。

留学で渡航するならほとんどの人がこのカードをもらうことになります。有効期間は在籍する学校や課程によってまちまち。私の場合、最初に在籍したパリ・エコールノルマル音楽院が 1年ごとに課程を修了していくシステムだったため、学校の「登録証明書(もしくは入学許可証)」に記載される在籍期間も1年だけ。そのため、毎年滞在許可証を更新しなければならないという状況が3年間続きました。

 

フランスの役所仕事はお世辞にも効率が良いとはいえず、更新手続きの予約を取り、書類を揃えるところから実際にカードを受け取るまで、下手すると半年かかります。なので滞在許可証の心配をせずに安心して住んでいられるのは残りの半年。とはいえ、日本とは比較にならない数の移民を受け入れてくれる国なのであり、それに対して役所の処理能力が追いついていないのも、無理ないこととも言えます。

とにかく、どんなにフランスに馴染んで生活しているつもりでも、年に一回、この時だけは、自分が「外国人」であること、期限付きでこの国に住むことを「許可していただいている」事実をひしひしと思い出させられるのであり、言葉にもまだ自信のなかった1回目、2回目はとにかく苦痛でした。

 

1回目の更新(2016年度)の時は、窓口がパリ北部Porte de Clignancourtの警察署で、地域の雰囲気は良くないですが、約束の時間に行けばちゃんと対応してくれ、トータルでも2時間以内で書類提出(成績証明、次年度の登録証明、経済証明、住居証明etc.)とレセピセ(本カードができるまでの間の仮滞在許可証)の受け取りが終わったと記憶しています。初めてだったので色々心配で、戸籍謄本が古すぎて文句を言われるのではないかと心配になって、家族に取り直して、外務省のアポスティーユをつけて送ってもらったり、在仏日本大使館の翻訳では認められないことがあるという噂だかブログだかを目にして、高いお金を払って法廷翻訳家に依頼したり、念には念を入れましたが、まあそんな物に一瞥もくれませんし、一生懸命用意した書類も提出を求められなかったり、空振りは色々ありましたが。

 

最悪だったのは2回目(2017年度)、この年から窓口がCité Universitaire(パリ国際大学都市)に移り、ここの対応が本当にひどかった。更新手続きのRDV(ランデヴー)の予約もなかなかうまくオンラインでできなかったり(期限切れの3ヶ月前には予約を取らないと間に合わないが、サイトのエラーが連発して全然機能しない)、ただ書類を提出するだけのために丸一日列に並んだり(飲まず食わず・初冬のパリの寒空の下、屋外で早朝から並ぶ)、カードが出来上がっているのにその通知が来なくて(本来SMSが届く)、その問い合わせをするためだけに再度並んだり(3時間並んだ挙句、一言「出来てるわよ、はい、ここに取りに行ってね、さよなら」)。その上職員の対応や態度は非常に横柄、かつ誘導や時間管理もいい加減で、予約の時間に出向いても数時間待たされることは当たり前。次にいつ建物の中に入れるかもわからないまま、列の前後の人と励まし合いながらただ待つ。建物の扉が開くたび、情報を求める人々がたった1人の職員のもとに押し寄せる。

まだ言葉もそんなに自信がなく、精神的にも今ほど大きく構えていられませんでしたから、不安と疲労は凄まじかったです。

 

3回目(2018年度)でようやく、パリ国立高等音楽院室内楽修士課程に在籍したことで、2年間有効のカードをもらうことが出来、2019年の秋〜冬は初めて滞在許可証の更新のことを考えずに過ごすことができました。

そして4回目、学生としての滞在許可証を更新する代わりに踏み切ったのが、有効期間最大4年のPasseport Talent(才能パスポート)の芸術・文化従事者分野(profession artistique et culturelle)への身分変更でした。これにより、今後のフランスでの活動において色々なアドバンテージが生まれます。

 

その内容や手続きについては次の記事で。